日本での「カジノ構想」は、その後とくに進展していないようだが、ラスベガスを擁するアメリカやお隣り韓国、そしてマカオなど、公認のカジノがある国や地域は非常に多いです。
自分の国ではできないだけに、そういう場所ではつい散財してしまうのが日本人で、「10万円でやめるつもりが、気づいたらキャッシュカードの限度額までやってしまった」などという経験を持つ人もいるのではないでしょうか。
たとえば軍資金の10万円が15万円に増えたとする。勝負ごとにはビギナーズラックがつきものなので、こういう展開はわりとありがちです。その時点で5万円も儲けたことになるが、ここでやめずに、その5万円を次のゲームにつぎ込みます。
案の定、負けてしまい勝ち分はあえなくパー。それでも「まあ、これでプラスマイナスゼロだな」となんとなく納得したような気になる。そこで再び最初の軍資金の10万円をつぎ込むと、今度はすっからかんになる。
10万円の損失はふつうに考えればかなり痛いが、どういうわけか「どうせ、もともとあってないようなお金だし」と妙に納得してしまいます。一時的には持ち金は15万円になったのだから、このケースは15万円の損失と考えることもできます。
なぜ日常生活で使う15万円は惜しいのに、カジノでスッた15万円は惜しくないのだろうか。
じつはこれは、「ハウスマネー効果」と呼ばれる一種の心理的傾向で説明がつきます。
「ハウス」とは賭場を意味します。この効果をわかりやすく言えば、「ハウス(カジノ)にいる間は、自分のお金であるにもかかわらず、ハウスのものだと認識してしまう」ということです。
とくに最初の軍資金の価値が軽ければ軽いほど陥りやすいようで、たとえば、軍資金10万円で自分の人生が決まるなどという人なら別だが、カジノなどにやってくる人はほとんどが遊びに来ています。
そこで使うお金はあくまでも「遊ぶ金」であり、そう決めてしまえば額の大小は問題ではありません。儲けたお金を含め、すべて「あぶく銭」と認識されるのです。
ちょっと暇つぶしのつもりで入ったパチンコ店で、運よく1000円で大当たりが出たのに、店を出るころには有り金をはたいていたなどという場合も同様です。
店の中ではハウスマネー効果でどんどんつぎ込めるのに、自宅に戻って我に返ったとたん悔しい思いが沸き返ってくるのです。
いくらすっても痛くもかゆくもない大富豪ならともかく、ギャンブルで身を持ち崩すようなタイプは、この効果を思い出し、冷静な行動を心がけたい。
