ファッションは回帰するもの言われます。その昔流行したスタイルが、数十年のときを経て再び注目されるのはよくある話です。そんな日本のファッションの歴史を振り返ってみると、ヒョウ柄やヘビ柄に代表される"アニマルプリント"が何度か流行しています。
しかも、そのアニマルプリントが流行した時代には不思議とある共通点を見い出すことができます。ちなみに、最近でとくにアニマルプリントが流行した年といえば、1994(平成6)年。
街を歩く女性たちはヒョウ柄のミニスカートやコートに身をつつみ、ヘビ柄の財布や小物などは必須アイテムでした。さらにさかのぼると、(昭和39)年ごろにもアニマルプリントブームが起きています。
このふたつの時代は、いずれも不況の真っただ中にあったという共通点を持っています。企業の倒産が相次いで「40年不況」といわれたのが、1960年代中期。そして、バブル経済が崩壊したのが1990年代前半。つまりは、景気の悪化した時期に奇しくもアニマルプリントが流行しているのです。
ところでなぜ、景気が悪くなると人々はアニマルプリントを求めるのか。じつはこれ、ペットと遊ぶことで安らぎを感じるあの”感覚”と似ています。1日の仕事を終え、身も心も疲れ果てて自宅に帰ると「ワンワン!」と出迎えてくれる愛犬の仕草に癒されます。
ペットを飼った経験がある人なら覚えがあるだろうが、精神的に疲れているときほど動物を近くに感じたくなるというわけです。その証拠に「リーマン・ショック」に端を発する世界的な金融不況が暗く影を落とした時、空前のペットブームが訪れていました。
つまり、ド派手なファッションの代名詞ともいえるアニマルプリントも、じつは不況の時代に癒しを求める深層心理の現れだったようです。
もし、会うたびにアニマルプリントを身につけている友人や知り合いがいたら、派手さに反してその人は不安や寂しさを周囲に訴えているのかもしれません。
